MONTHLY MAGAZINE 7月号

6月号では、本学が児童福祉学科単科の短期大学である理由について、背景を含めてお伝えしました。
今回は元児童養護施設職員で、現在は相模原市子どもの権利相談室救済委員などの社会的活動を行う社会福祉学専門の本学教員中安恆太先生から“ 子どもの福祉 ”の実態についてご紹介します。

みなさんは、児童虐待の相談件数の現状をご存知でしょうか

厚生労働省が発表した2020年度の全国215カ所の児童相談所で児童虐待相談として対応した件数(速報値)は、20万5044件でした。
前年度比で5.8%増、20年前との比較では11.5倍以上になっています。特に近年は高い増加率で推移しています(下図参照・内容は右図参照)。この件数を子どもの数で割ると、約100人に1人の割合になります。

みなさんは、家庭以外にも学校や部活動、アルバイト先などたくさんの世界の中で生活をされているでしょう。しかし幼稚園や保育園等に通う子ども達は家庭と園、この2つの世界で過ごしていることがほとんどです。生活時間が一番長い家庭の中で、もし子どもにとって辛く苦しいことがあったら、どんな気持ちで日々を過ごすことになるでしょうか。
子どもにとってのもう一つの世界である幼稚園や保育園等では、子どもの表情や言動から小さな変化に気づくことがとても大切です。もし子どもが暗い表情で過ごす日が続いたら「家庭で何かあるかもしれない」と察する力が保育者には必要です。
ですから和泉短期大学では「信頼される保育者」に必要なことを、1年生の早い段階で自然と考えられるように、学生が実際に多様な現場と出会い感じる機会を設けています。体験を通して様々な視点から子どもや保育について学びを深めていき、実習等を通しさらに理解を深めた後、2年生では子どもや保護者の困り事へのアプローチ方法について具体的に学んでいきます。次は、和泉短期大学児童福祉学科での学びの特徴について具体的にご紹介します。

子どもの幸せについて考える児童福祉学科での学びとは? 
特徴的な取り組みをご紹介します!

2022年度授業「キャリアデザインⅠ」では、児童養護施設で生活していた当事者の方の話を聴く機会や、児童相談所一時保護所や乳児院など現場で活躍されている卒業生の話を聴く機会を設けました。

学生Voice:福祉の学びから多角的に物事を捉え広い視野をもつことの大切さを知りました。当事者の方のお話を伺えたことは大変貴重な経験になりました。(1年生 Hさん)

本学と連携している保育園、児童養護施設、障がい児を支援する施設等、身近にある福祉施設を学生が選んでボランティア体験へ行きます。6月に行われた体験説明会では、市内の保育園の園長先生や、児童養護施設の職員の方にお越しいただき、子ども達の様子や仕事の内容についてお話いただきました。

学生Voice:高校時代は、コロナ禍でインターンシップなどに参加すること ができませんでした。実習前に現場体験ができることはとても 嬉しく、わくわくしています。(1年生 Mさん)

授業「保育実習指導Ⅰ(施設) 」では、様々な児童福祉施設について知るために、児童養護施設、障がい者支援施設、社会福祉協議会などで働いていた経験がある教員から、施設ごとの特徴や実習で学ぶポイントについて詳しく学びます。*施設実習は保育士資格取得に必須科目です。

学生Voice:言葉でのコミュニケーションが困難な利用者さんとのやり取りに、始めは戸惑ってしまいましたが授業で学んだことを思い出し徐々に思いを汲み取ることができるようになりました。(2年生 Yさん)

児童福祉関連の仕事を目指す学生へ、各施設の職員の方をお招きして進路講座や就職説明会を学内で実施します。また、公務員福祉職や保育士職採用に向けた公務員試験対策講座や、社会福祉、心理、保育・教育系などの四年制大学進学を目指す学生に受験対策講座等を実施しています。
専門スタッフの指導を無料で受けることができます。

卒業生Voice:試験勉強を1対1で教えていただきました。採用面接の際には、和泉の学びから児童虐待や特別支援について自分の考えを自分の言葉でしっかり伝えることができました。(品川区保育士 Aさん)

2009年から児童虐待防止推進月間に相模原市こども・若者未来局等の組織と協力して児童虐待啓蒙活動であるオレンジリボン運動を行っています。また、本学児童福祉研究室では、地域の子育て家庭の方々に向けた冊子「いっしょに子育て」を発行しています。

卒業生Voice:一昨年度から本村相模原市長を訪問して本学の児童虐待防止啓蒙活動への取り組みを報告しています。(私立保育園保育士 Kさん)

子どもの幸せのためには、保護者の幸せも考えられる保育者が必要

虐待が起きる背景には、保護者が貧困、心身の疲労の蓄積などの問題を誰にも相談できず、地域から孤立している状態があることが多いと言われています。「こども家庭庁」の基本方針の1つには「子どもや子育てをしている人の目線に立った政策を作ること」とあります。
子どもが幸せになるためには、子どもだけではなく、保護者の悩みも理解する必要があります。これらの担い手となる保育者に求められるのは、子どもへの直接的ケアはもちろん子どもを取り巻く社会背景に目を向け、家庭や地域も支援の対象として捉え、関わることのできる力です。
和泉短期大学では、保育者を志す学生が、子どもや保護者から「信頼される支援者」へと成長し、“ 子どもが幸せになる社会 ”に貢献できる人材の育成を目指しています。

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[記事公開日]2022年07月18日[最終更新日]:2022年08月25日