MONTHLY MAGAZINE 6月号

和泉短期大学は、保育士資格・幼稚園教諭免許状を取得できる保育者を養成する短期大学です。これらの資格を取得できる学校はいろいろありますが「児童福祉学科」は本学だけ※です。同じ資格でも学校のカラーで学びも異なります。なぜ本学が「児童福祉」を大切にしているのか簡単にではありますが解説したいと思います。  ※本学は日本で唯一の児童福祉学科単科の短期大学です。

「福祉」の語源を知っていますか?
「福」も「祉」も「しあわせ、さいわい」という意味があります。「児童」を「子ども」と言い換えると、児童福祉は“ 子どもの幸せ ”という意味になります。
“ 子どもの幸せ ”のために、右図のような取り組みが行われています。これらはごく一般に保育園、認定こども園、幼稚園などの就学前施設を利用するご家庭にとって身近なテーマばかりです。

皆さんは保育園や幼稚園の先生の仕事をイメージする時に、子どものお世話をしたり、音楽や踊りや絵画制作や運動などを教えてあげる人というイメージがあるかもしれません。しかし保育者はまず子どもが安心・安全を実感できるような関わりや環境を考えています。
そのためにはどのような視点が必要でしょうか?現在日本は、少子化・核家族化・都市化などの要因により、人とのつながりが希薄となり、保護者も子どもも孤立化し、困っていることが問題となっています。例えば、
 ・「活発な我が子とどう過ごしたらよいのか分からず不安」

 ・「はじめての赤ちゃんのお世話、これで合っているのか不安」

 ・「パートナーや両親と、育て方の意見が違い悩む」

 ・「子どもと二人きりの時間が長すぎて、精神的に落ち込む」

 ・「人づきあいが苦手で新しい環境が不安」

などの相談が保育者にも寄せられるのです。子どもの幸せを支えるために保護者も援助する必要性が見えてきます。
保育者は、子どもが幸せに生活し豊かに育つために、園内で過ごす時間を充実させることはもちろん子どもが園外で関わる保護者や家庭の様子、子どもを取り巻く環境が良好で安心や安全を感じることができるかどうかにも目を向けています。つまり、児童福祉の視点をもって子どもや保護者を援助しているのです。

2020年度には、虐待に関する相談や不登校がこれまでで最多となり、少子化問題やコロナ禍で生じた問題などの解決が急がれています。虐待への対応件数は子ども100人に1人と言われています。
そこで政府は子どもに関わる取り組みや仕事を日本社会の中心において(こどもまんなか社会)子どもの目線で子どもの権利を大切にして、全ての子どもがそのいのちを守られ、自分らしく健やかに安心して過ごすことができるように、
「こども家庭庁」を2 0 2 3年4月に作ることを目指して法律案を国会に提出しました。
児童福祉は特定で個別のケースだろうと考える方もいるかもしれませんが、現代社会においては社会の中心となる理念であり内容なのです。
次号でもう少し詳しく紹介したいと思います。

和泉短期大学が児童福祉を大切にしてきた理由は本学の成り立ちと深く関係があります。
第二次世界大戦後、街には戦災孤児と言われる親を亡くした困窮した子どもたちで溢れかえっていました。戦後すぐにクリスチャン・チルドレンズ・ファンドの援助が注がれ、バット博士は日本の子どもたちの援助活動の責任者となりました。1952年に「社会福祉法人基督教児童福祉会」の厚生省認可を受けます。その後、バット博士記念センターが世田谷に建ち「バット博士記念ホーム」と「バット博士記念養成所」を開設しました。この「バット博士記念養成所」で行われた施設職員の現任訓練講習会が「玉川保母専門学院」となり、「和泉短期大学」として発展してきたのです。
このように振り返ると、敗戦国である日本の子ども達の命を救おうとクリスチャン・チルドレンズ・ファンドの援助が注がれ、その働き手を育てるために保育士養成の教育機関「和泉短期大学」が誕生したことになります。

「隣人を自分のように愛しなさい。」キリスト教人道精神に基づいて、アメリカの人達が子ども達を救済するために、日本に手を差伸べたのです。
恵まれない子ども達を支援する働き人を養成するこの和泉短期大学のミッションは、まさに児童福祉そのものなのです。子どものしあわせを願い始まった博士たちの活動は、本学の建学の精神とスクールモットー「愛と奉仕」に繋がり、現在本学で学ぶ学生にも脈々と受け継がれているのです。
私達和泉短期大学は「子ども達の幸せとは何か」そして「子ども達が幸せになるにはどうしたらよいのか」ということを常に考え、つまり児童福祉の精神を基盤にして、保育士資格・幼稚園教諭免許状の取得を目指す保育者の養成に当たっているのです。

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[記事公開日]2022年06月07日[最終更新日]:2022年06月10日