MONTHLY MAGAZINE 5月号

どのような人に保育者を勧めたらよいでしょう?と高校の先生から質問を受けることがあります。そこで本学の研究論文を参照しながら、保育者に求められる人物像について考えてみたいと思います。

現場が求める保育者養成教育

下のグラフは983園へのアンケートの結果です。保育学生に必要な教育内容について聞いています。
基本的マナー、勤務への意識、基本的な社会人としての振る舞いを身につけていることと、コミュニケーションなど保育者として特に必要となる社会性が際立ちます。一番大事なことは社会人として信頼される姿勢であり、加えて保育者という職業に特に必要なスキルとして他者の思いを共感的に汲み取ったり、他者の訴えに応じることのできる感性やコミュニケーション力が求められてることが分かります。

現場が求める保育者像

次の質問は実習生に対して望む基本的事項についてです。上位は一生懸命さ、積極性といった「保育への意欲・姿勢」です。これらは、楽器演奏、保育技術、年齢別の発達の理解、文章の正確さといった知識や技能よりも大きなポイントを得ていることが分かります。
このことから、高校時代には高校生としての基本的な社会性、特に人との関わりや対話に大きな不安がなく、保育を学ぶことへの意欲が必要だと分かります。

非認知的能力が求められている

アンケートから保育者養成には、出来ることの量や成績といった一般的にテストで測定できる「認知能力」よりも、意欲的に取り組む姿勢や前向きなチャレンジ人と一緒に物事を進めていく態度といった「非認知能力」が資質として求められる職業であることが見えてきます。
保育者を志す皆さんには、情緒的な側面を多く含んでいるこの非認知能力をもっていること、保育者養成校選びでは知識や技術だけではなく、この目には見えにくい力、数値では測りにくい力を育む教育を行っているかが重要なのです。

近年、保育者を志す男性は増えてきていますが、現状はまだ少数派です。高校の先生や保護者の方からは男性保育者の実際はどうなのか?というご質問を受けることがあります。本学では毎年入学者全体の1割程度の男性(20名前後)が入学してきます。今回は、保育者歴1年目から5年目の15名の卒業生にインタビュー調査を行いました。男性保育者として9年間、幼稚園での実務経験がある筆者が報告させていただきます。

本学卒業生へのインタビューの結果から、性別の違いによって保育者の資質が大きく変わるというよりは、それぞれの人の特性を意識して活かしていくことが大切であることが分かります。上記のインタビューの「男性」の文字を取ると、すべての保育者に当てはまります。男性は現代社会の保育・教育の世界においては子どもや子どもを取り巻く人々への誤解を与えない配慮が必要で、信頼を得ていく努力が必要です。しかし、子どもや保護者や同僚などからの信頼を得る努力は性差による違いがあるわけではありません。
保育者を志す方には、特に「保育への情熱や意欲」「子どもや他者への敬意ある態度」「コミュニケーションにより保育を進めていく力」が必要だと分かりました。これらは「子どもの側に立ち、寄り添い、他者からの信頼を得る」ということだと言えるでしょう。実習園アンケートから、保育者を目指す方には、専門的な教育を通しての人格形成により、自らの人間性を磨くことができる養成校へ進学が必要だと分かります。和泉短期大学には、“愛と奉仕”のスクールモットーで、教師と友と共に学び成長できる大学教育があります。

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[記事公開日]2022年05月18日